編み物の力学シミュレーション

Abstract

編み物は,1次元的な糸を互いに絡み合わせることで形成される複雑な3次元構造を持っており,製造過程で生じる残留ひずみによって自発的に変形することが知られている.この固有の変形特性を解析することは産業的に極めて重要であるが,複雑な構造によって生じる糸同士の無数の接触が,従来手法による安定したシミュレーション主要な課題となってきた.本研究では,編み物の残留応力に駆動される形状変化過程を安定的に再現できるなシミュレータの開発に成功した.本手法の主な新規性は,残留ひずみによる編み物の形状変化を再現したことである.また,編み物の状態はB-Spline曲線に基づく1次元弾性棒モデルを用いて表した.さらに,多数の糸間相互作用を管理し安定した数値解析を確保するため,エネルギーベースの接触記述法を採用した.これにより,残留応力がある編み物の複雑な機械的挙動を安定的に解析できた.また本研究では,開発したシミュレータを用いて編み物のカール状変形の再現を行い,シミュレータの有用性を示す.

Video

モデル作成の様子

シミュレーションの様子